犬にモテる

 吉祥寺の某書店に古本の買い取りをお願いしたその足で、井の頭公園をぶらぶらしていた。ふと池のほとりに目をやると、鴨の親子が

 

🦆🐤🐤🐤🐤🐤

 

↑まさにこの構図で泳いでいる。

 かあいいねえ、と思ってしばらく眺めていると、コツ、コツと私の足を小突くものがある。知り合いでも通りがかったかと思い振り返ってみる、しかし特にそれらしい人影は見当たらない。

 次いでようやく足下に目をやると、正体はこれまたかわいらしい「犬」であった。犬種というやつにはちょっと詳しくないのだが、まあトイプードルとかそういう類であろう。とにかく茶色くて小さい、モフモフしたやつである。

 肝心の飼い主はというと1メートルほど離れた場所で(もちろんリードはつないでいたが)かあいいねえ、と鴨の親子をぼんやり眺めていた。

 

 人間には特別モテたことがないが、犬にはこんな具合で結構モテる。道を歩いていて、向かい側を散歩でやってくる犬が飼い主そっちのけでこちらに寄ってくる、というのはままあるし、街中でふと視線を感じると喫茶店のテラス席で主人を待つ犬がこちらをじっと見つめている、などというのもよくある。

 まあこれだけなら、「あなたの周りにたまたま人懐こい子が多いだけなんじゃないですか」という感じではある。しかしもっと例を出すならば、以前犬を飼っているお宅に友人数人でお邪魔したときのこと、そのお犬様がやたらと私の方にばかり擦り寄ってくるので、ご家族の方々と微妙な空気になったことすらある。こうなるとやはり自分は犬にモテるといってよいのではないか、という気持ちになる。

 

 私も犬は好きな方であるし、仲良くしてくれて悪い気はしないが、最近では犬以外の生物にも好かれつつある、というか警戒を解かれつつある。これはじつは少し考えものである。

 まず鳥。雀ぐらいならまだいいが、鳩なんかがチンタラ歩道を歩いていて全然どかないのは正直うっとうしい。

 カラスもまあ、悪さをしない限りにおいては多めに見たいところだが、あいつらよく燃えるゴミの日の朝に集積所をいじってるでしょう。そういうのを見かけたときにほらほら邪魔邪魔、と私が近づいていってもあ、オハザス、ぐらいのテンションでノソノソしていやがる。カラスと目を合わすなとはよく聞くが、なんなら向こうから目を合わせてくるぐらいである。申し訳ないが君らと友達になる気はない。

 あと虫。特に蜘蛛。気がつくと肩やら手にちょこんと乗っているので、できればやめてほしい。そのくせこちらがちょっと身体を動かそうものなら、大慌てで糸をひいてブランコを始めたりするのである。そんなら最初からちゃんと逃げなさい。

 まあこういった場合もぺし、と潰したりはしない。「蜘蛛の糸」なんて話もあることだし、注意深く窓際か玄関に連れていってやることにしている。

 

 どうせならこう、熊とか狼とか、そういうパワーのある動物と仲良くなってみたいものである(流石に無理だろうか)。何かあったときに頼りになりそうだ。

 

 ところで、上記のことが気になって「犬が寄ってくる人 なぜ」でググってみたことがある。検索結果として多かったのは「優しい人」「過剰に接触してこない、穏やかな人」という類であった。なーんだ、まさに俺だな、合ってる合ってる、Googleも結構使えんじゃんと思っていたら、それらのなかに「孤独な人」というのがあった。なんでも、犬はいつも独りでふらふらしている人間が本能的にわかるので、そういう人間に自然寄っていくのだと。誰がぼっちか。

蜘蛛の糸

蜘蛛の糸

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com