読んだ・聴いた・観た(5月)

 今年に入ってから頑張ってこれ↑記録し続けているが、ちょっと無理が出てきた。

一応普通にサラリーマンをやっていて、時期によっちゃ忙しくなくもないので、その月触れたものをコンスタントにじっくり記録する時間がとりづらい。こともある。

 なので毎月という縛りは緩めにして、ついでに取り上げるものももう少し絞って、という感じでやっていく。まあ主にみるのは自分だから、自分でわかっていればOK。

(などと言いつつ、ブログ見てくださっている人がちゃんといらっしゃるということは折に触れて聞いております。恐れ多いぜ。拙文というか乱文というかですが、本当にありがとうございます)。

 

 

 

1.BOOKS

吉田修一『泣きたくなるような青空』

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 見る人が見れば、すぐにThe Beatlesの「Because」のイントロが脳内再生されそうなタイトルが素敵である。タイトルの引きって本当に大切だよなあ、と思う。

 今はゴリゴリにコロナ禍で、あらゆる人にとって縁遠いものになってしまった旅行というアクティビティ(特に海外旅行は……)。僕はもともとインドアなほうだから比較的ダメージが少ないのだが、だからといっていつまでも東京から出られないというのは切ないものがある。

 この本のような旅行記を読むことがせめてもの救いだろうか。人によっては、却って旅することへの欲望がかき立てられてしんどいかしらね。

 本書は読みやすいし、1つひとつのエピソードもしっかり練られていて(小説家の文章ですものね)、ぜひ手元に置いておきたい1冊。

 

ジャン=リュック・ナンシー著,西宮かおり訳『思考の取引

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 この本は、大学を卒業する少し前に六本木の『文喫』*1で買ったと記憶している。

 買うとき、自分とそう歳の変わらなさそうな店員さんが「僕もこの本すごく好きなんです。ぜひ楽しんでくださいね」と声をかけてくれ、早速帰宅して読みはじめたのだが、何のこっちゃわからなかった

 彼はこんなに難解な書物について笑顔で「すごく好きなんです」と言っていたのか、どんだけ読解力が高いんだ……と、(今思えば結構失礼な感想を抱きながら)軽くショックを受けた。

 この本は仕事をするようになってから読み返して、ようやく言わんとしているところがわかるようになってきた。

 そのためにも、書物を開かねばならない。開きと閉じとのこの戯れを、揺さぶらねばならない。この戯れのおかげで、主体たる書物は、その真の力をようやくその手につかむのだから。そう、読まれる対象となることで。(p.59)

 本は読まれないことには仕方あるめえ、というのは商売的にもそうだし、何となく編み手として仕事をしていくなかでより手触りのある表現として迫ってきた印象がある。

 この本は、また数か月、数年経ってから読み返すことになると思う。

 

●イ・ラン『悲しくてかっこいい人

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 これもタイトルが良い。原題は「いったい何をして生きている人間かと(대체뭐하자는인간이지싶었다)」だそうで、これはこれでなるほどという感じだけど、翻訳の題が個人的にはかなりツボだ。

 著者はシンガーソングライターだったりイラストレーターだったり、いわゆるマルチクリエイター(僕はこの言い方、あまり好きではないのだけれど……)的な立ち位置の人っぽい。

 が、殊に言葉の並べ方においてその魅力が際立っているように思う。味気なくなく、かといって虚飾もなく。そして狙って出せるものではない色気のようなものが行間にフヨフヨと漂っている感じがある。

 

 

茨木のり子谷川俊太郎編)『茨木のり子詩集』

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 茨木のり子というと、『わたしが一番きれいだったとき』が一番有名だろうか。小学校か中学校のとき、国語の授業で教わった記憶がある。中学校の授業はあまり真面目に聞いていなかったから、小学校かな。

 いつかきちんと詩集を読みたいと思っていてずっとそのままだったのだが、月の末に少し時間が取れたのでじっくり読んだ。

 わりに状況説明的な表現も多く、具体的なシーンを想像しやすいのだが、そのなかに人々が普遍的にもっている感情・感覚の描写が巧妙に練り込まれていて、そこに気づいたときの感動が大きい。

 ひらがなと漢字のバランスも絶妙で心地よい。

人に伝えようとすれば

あまりに平凡すぎて

けっして伝わってはゆかないだろう

その人の気圧のなかでしか

生きられぬ言葉もある

 「言いたくない言葉」(pp.142-143)

 

2.COMICS

林田球ドロヘドロ 1』

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 知っている人は知っている名作、みたいな感じで何度かタイトルを聞いたことがあったので、TSUTAYAで借りて読みはじめた。

 魔法が出てくるダークファンタジー。まだよく掴み切れていないが、ダークファンタジー好きなので期待しつつもうちょっと進めてみます。

 

藤本タツキファイアパンチ 1

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 『チェンソーマン』が大好きなので、藤本先生の他の作品も読んどかねえとね、というテンションで買ってきた。

 面白いです普通に。チェほどの情報量の暴力ではない。で、チェより絵が綺麗な気がする……。

 

藤子・F・不二雄『パラレル同窓会』

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 前も書いたような気がするけど、藤子Fの本領はこういうダークなSFでありブラックジョークだったと聞く。

 ドラえもんパーマンも多くの人に愛されていたし、藤子F自身も愛していただろうけど、そんな作品たちと同じ絵柄で描かれる大人向けの作品ももっと知られて良い気がするな。

  

3.MUSIC

GRAPEVINE - 新しい果実

New Fruit

New Fruit

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 #2「目覚ましはいつも鳴りやまない」のスタイリッシュなリズムと、遊び心マシマシのコード進行の合わせ技。3分49秒ずっとワクワクしていられる。

 先行シングルの#3「Gifted」の浮遊感もクセになるし、#5「ぬばたま」の久石譲的ピアノもこれからの季節に聴きたい雰囲気。

 GRAPEVINEの魅力は何よりメロディの良さだと思っていたけれど、改めて聴くとリズムとかインストの使い方も凝りに凝っていて、聴くほどに味わいが深くなっていくバンドだと思います。

 

あいみょん - 愛を知るまでは/桜が降る夜は

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 あいみょんさん、きちんと聴いたのちょっと久しぶりかも。というのも#3「ミニスカートとハイライト」のインストを、大好きなミツメが担当しているんですね。

 ぶっちゃけそれが一番の理由ではある()

 大竹さんのギター、こういう立ち上がりのパキッとした高い声にも合うんだなあ。

 

Steely Dan - Gaucho

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 最近、家ではSteely Danをよくかけている。単純に気分で、作業中とかにかけとくと何だか捗る。

 Gauchoは制作にめちゃくちゃカネがかかっていて、ついでに色んな権利問題やらアクシデントで揉めに揉めたアルバムらしい。でもどの曲も綺麗でカッコよくまとまっていますよね。

 #3 Glamour Professionのイントロの上モノのオブリが大好き。その後のドナルド・フェイゲンのソロ「The Nightfly」に通じる音像が既に確立されているよね。

 

●KIRINJI - 3

3

3

  • KIRINJI
  • J-Pop
  • ¥2139

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  星野源さん、ご結婚おめでとうございます。

 本作収録の「車と女」という曲はおげんさんの「恋」の元ネタです。と言われています。

 

●black midi - Cavalcade

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 こわ、何だこのアルバム っていうのが最初聴いたときの感想でした。ここ数週間はもう全部このアルバムに持っていかれてしまっている。

 black midiは2019年に出た1stアルバムもだいぶ面白かったけど、 今作で面白さ大加速してる。

 だいたい、1曲目から色んな音楽混ぜすぎでは? ストリングスの感じ完全にバルトーク *2だろ。

 と思っていたら、マジで影響を受けているくさい。バルトークとポストロックの融合は流石に初めての体験だ。

rollingstonejapan.com

 じつは9月にあるblack midi来日公演観てくる予定なので、またそこでなんか書くかも。

4.FILMS etc.

moviola.jp

  読書家の話が観れるかな、と思ったらちょっと違っていて、アメリカの希少本オタクの話だった(「セラーズ」ってんだからそうだわな)。

 読み物としてよりはフェティッシュとしての書物の側面が強調されている感じで、ちょーっと置いてきぼり感があって退屈だったかも。

 とはいえ、本がフェティッシュになってしまう感じがややわかってしまう、危ない危ない。僕も「お、この本はモノで持ってたいな」なんて言ってすぐに買ってしまうので。

 

 

☆最近覚えたこと・言葉☆

・自宅アパートの前に咲いている花は「リノリウム」ではなく「ゼラニウム

チンパンジー分類学上「サル」ではない(とする説がある)

 

5月分おしまい。

*1:入場料を払って入店する、ちょっと変わった仕組みの書店。入店してしまえば、立ち読みしようが座り読みしようが自由というスタイルで人気を博している。過ごし方という面で見れば図書館に似ていなくもないが、気に入った本があればもちろん買える

*2:ハンガリーの音楽家。小さい頃にピアノ習ってたよ、って人は名前ぐらいは聞いたことあるかも。伝統的なクラシック音楽演奏家としてバッハなんかを研究した一方で、自身のルーツである東ヨーロッパの民族音楽のエッセンスを、自作品にガンガン取り入れていった。彼の作品はそれ以前の「クラシック音楽」のルールを外れた難解なものも多いけれど、それでいてオリエンタルでエネルギッシュな魅力に溢れてもいる。

夏への扉って映画化したんだっけ

 6月。

 もうすぐ鬱陶しい梅雨が訪れ、それが過ぎればそこはもう夏であってさながら今の時期は夏への扉と言ったところか。ちょっと言い過ぎか。

 とはいえ、「これもう夏だろ……」みたいな日は既に2週間前ぐらいからちょいちょい顔を出しているのであって、僕はその度、「あーあ」という気持ちになる。

 僕のなかで、夏は四季のなかで最下位である。嫌いとまでは言わないが、春夏秋冬に順位をつけるのだったら申し訳ないがいちばん下である。

 理由は暑いからである。それだけである。

 

 まあそれはいいとして、東京のかなり西の方に青梅という街がある。そこに『夏への扉』という喫茶店がある。去年の夏に行ってきたのだが、かなりよかった。

 

---

 色々あって2か月ほど先延ばしになっていた運転免許の更新のため、東陽町の試験場に行ったのが去年の8月の頭であった。

 更新はまあ滞りなく終わり、ギラギラと夏の陽が照りつける街に放り出されたのはちょうど真昼ごろ。東陽町ですることも特にないので、東西線に乗ってとりあえず中野まで向かう。

 

 中野に着いたら電車を降り、中野サンプラザの前にある停留所に行き、いちばん手前の乗り場でバスに乗って江古田まで帰るのがわかりやすい。のだが、そのときはそうせず、「外に出たんだし吉祥寺あたりで買い物でもして帰ろう」と思い中央線快速に乗り換えた。

 

 で、中野から吉祥寺までのものの10分程度の間に眠りに落ちた。気がつけば「武蔵小金井」なる名前しか聞いたことがない駅に着いていた。

 

 

 まあいいや、と思った。

 このままずっと乗ってよう、と。

 寝惚眼でドア上の電光掲示板を見ると「青梅行き」とある。じゃあいいや、今日は青梅まで行っちゃえ。どうせ免許更新が終わったらその日は暇だったので、諸々なんでもよかった。

 

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 んで、行ったのが『夏への扉』だった。真夏だというのにエアコンは付いておらず広々と開けられた窓からの風だけが頼りだったが、不思議と暑くなかった。たまたま鞄にはハインラインの『夏への扉』が入っていて、せっかくだから「夏への扉夏への扉を読んでみよう」とページを開いたが、結局3ページも読まなかったように思う。本なんかは閉じてボンヤリしていたかった。

 

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 青梅鉄道公園にも行った。実は、こちらのほうはずっと小さな子どもの頃に一度来たことがあった。とはいえ、公園に鎮座する機関車たちは昔見たときよりもずいぶん小さく見えた(僕がデカくなっているのだから、まあ、当然っちゃ当然ではある)。

 

 

 全然好きじゃない夏のはずなのに、この日は「今日が夏でよかったな」と2回ぐらい思った記憶がある。

 

 この夏もそんな感じの日が、せめて1日ぐらいはあってほしい。

 

www.hayakawa-online.co.jp

 

music.apple.com

読んだ・聴いた・観た(4月)

 

 やっぱテレビがあった方がいいのではないか、と最近思い始めている(いま住んでいる部屋にはない。 引越しのときに、面倒だから当分テレビはいいやと思って買わず、以降ずっとそのままにしている)。

 ちょっと前にたまたまテレビドラマを見る機会があり(「コントが始まる」)、普通に面白かった。PCでもテレビ番組見れるけど、やっぱテレビドラマはテレビで見たいよね。

 以下今月のやつです。

 

 

 

1.BOOKS

伊藤亜紗 編『「利他」とは何か』

books.shueisha.co.jp

 伊藤さんの著作は過去に『どもる体』(医学書院)、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)を読んでおり、どちらも興味深かったので新刊を必ずチェックしている著者のひとり。  

 この本には編集としてかかわっており、各章の執筆陣も非常に魅力的な面々だったので手にとった。

 若松英輔さんによる、柳宗悦の『民藝』の思想から「美」と「利他」を結びつける論考が面白かった。

 

佐々木敦『ニッポンの音楽

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 そういえば日本のポップス音楽の歴史ってあんまりよくわかってなかったな、と思い手にとった1冊。戦後日本の「リスナー型」ミュージシャン(特に海外の音楽に積極的にアクセスして、国内で自分の音楽に昇華していった人たち)の系譜を辿るかたちになっている。

 取りあげるアーティストが(大きくは)5〜6組と非常に絞られているので、これをもって「ニッポンの音楽」とはタイトルが少々チャレンジングな気がしないでもないけれど、はっぴいえんどYMO渋谷系などの面々がどんな音楽に影響を受けたのかわかりやすく知ることができたし、クラフトワークやアズテック・カメラあたりのアーティストを聴き直す機会にもなったのでよかった。

 

関口良雄『昔日の客』

natsuhasha.com

私は常々こう思っているんです。古本屋という職業は、一冊の本に込められた作家、詩人の魂を扱う仕事なんだって

 などと言われたら読みたくなってしまうではないですか()

 1年以上は前になると思うが、大森のあるコーヒー屋さんに行ったときにおすすめされた本。そのときは持ち合わせがなくて買えず、最近になってようやく池袋のジュンク堂で見つけ、買うことができた。

 かつて大森にあった古書店の店主のエッセイ。いわゆる文学者の文章ではないので文壇で高く評価されたとかそういうものではなく、実際にしばらく絶版になっていたそうなのだが、夏葉社という「ひとり出版社(意味はそのままで、社員一人で編集〜販売までやっている会社。実はいくつかあるらしい)」が復刊させたのだと。いい話。

 著者が別の古書店に行ったとき、有名な文学者の伊藤整に間違われ、しばらくその体で通したという話が笑えた(しかもその後本人に会ったらしい)。

 

中井正一『美学入門』

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 美学に関する基礎的なトピックを概説してくれるとか、美学の歴史を追ってくれるとか、そういう本では実はない。そういう意味では「入門」というタイトルに引っ掛かりを覚える向きもあるのかも。

 でも、所々に「おっ」と引き込まれるような一文があり、それらは「美しさ」が持つ力を的確に説明するものになっていた。良い本だと思います。

例えば人を殺すことの目的でできた刀の中に、いつの間にか、いらだったり、血迷った心を寂めるような感じを持つ秩序と線が、現れたりするのである。つまり、めったに人を切ってはならないという反対のこころを、人間に教えていることになるのである。(P.20)

(いや、めったにというか絶対切っちゃダメだと思いますけどね?

 

●ヘッセ『シッダルタ

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 先月に続いてヘッセ。

 実在のブッダ=シッダルタの名前を借り、架空の人物が一切を愛する境地に至る小説。

 下記の引用が印象的だった。賢者として一段高いところから望む悟りと、人々と同じ目線で眺める悟り。

 今は人々を見る彼の眼もこれまでとは違ってきた、以前のような賢い誇らしい眼ではなくなった、その代りにその目は温かさと関心と同情とを増した。普通の旅人、小児人種たち、商人、軍人、女たちを渡して漕ぐときにも、これらの人々が今までのように縁のない他の世界の人々とは思えなくなった。(p.176)

 

町田康『猫にかまけて』

bookclub.kodansha.co.jp

 猫と共に暮らしたいという願いが長年ある。町田康のこの猫日記を読んでその想いを改めて感じた。

 とはいえ、どうしても我々人間より先に向こう側へ行ってしまうことの多い彼ら。そういう部分もありのままにきちんと記録されているので「猫猫ー❤️」という軽薄な感想に陥ることはきちんと防がれる。

 

2.COMICS

香山哲『ベルリンうわの空』

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 これも池袋ジュンク堂の地下1階、お気に入りの一角で見つけて買っ……てから半年ほど積んでいた。

 人々が動物や幾何学模様の組み合わせでできたキャラクターで描かれていて面白い。ベルリンの街がもつ多様性を表現してるんですかね。カフェやお店の雰囲気がいい感じに描かれていて好き。

 でも向こうは向こうでアジア人に対する偏見がある人もいるみたいですね。そういう面も隠さずに説明されているので好感。

 

沙村広明竹易てあし漫画全集 おひっこし』

kc.kodansha.co.jp

 BRUTUSのマンガ特集で見かけて買ったんだと思う。絵がちょい癖強い。笑

 一昔前のバンドやってる大学生ってこんなんだったんかなあ、と想像は膨らむ。

 あとイタリア語の先生好き。

 

池辺葵『私にできるすべてのこと』

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 「AIが人の仕事を奪うだなんて誰が言ったのだろう」というのが帯のコピーだけど、実際気になっている人は多いのではないかと思う。僕も気になるし。

 上の理由でAIが大量に廃棄された未来が舞台。そういう環境のなかでAIと人間の共存を試みる人たちの話。

 

●カシワイ『光と窓』

www.leed.co.jp

 児童文学の作品をマンガの形に落とし込んだ作品。こういう形態ってストーリーがよく知られている&固定なぶん絵で勝負するしかないだろうし、すごくハードルが高そう。

 ですがその絵が本当に綺麗で読み応えがあります。

 

3.MUSIC

ファイトクラブ

ファイトクラブ

  • 柴田聡子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

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 柴田さんに関しては一応好きなアーティストであると公言してきたつもりでした。

 しかし。先日彼女のライブDVDを観たとき、マジで知らない曲が多くて悲しかった。まあなんのことはない。初期の曲をしっかり聴いていなかったのでした。

 なのでこれは備忘録兼。

 

向こう髪

向こう髪

  • provided courtesy of iTunes

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 君島さんの作品であんまり聴かなかった感じのコード進行で新鮮だった。

 ガットギターの音が心地いい、というかギター超上手い(何を今更)

 本人のインタビューでガットギターの音を「独り言のよう」と表現していたけれど、非常に的確だと感じる。

 

www.youtube.com

 

My Eyes

My Eyes

  • provided courtesy of iTunes

https:

 コロナ禍で家に居なければいけないファンのためか、TRAVISが「RELAX」とかのテーマを決めてプレイリストを作り、公開してくれている。

 それで色々久しぶりに聞きました。My Eyesは僕がギターをやろうと思ったきっかけになった曲。懐かしー。

 

The Boy Wonders

The Boy Wonders

  • アズテック・カメラ
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

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 上記の『ニッポンの音楽』を読んだあと、アズカメ聴き直し大会をしてました。

 小沢健二小山田圭吾あたりの「渋谷系」に影響を与えたアーティストの筆頭でありつつ、アズカメ側としても坂本龍一へのリスペクトを公にしていたりなど、日本の音楽との関連が深いみたい。

 この曲はベースラインがかわいい。

 

Presence I (feat. KID FRESINO) [with 3exes]

Presence I (feat. KID FRESINO) [with 3exes]

  • STUTS & 松 たか子
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 アーティストの組み合わせが良すぎる。

 これテレビドラマの曲らしいんですね。んーやっぱテレビ欲しいな。

 

再会

再会

  • KIRINJI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 キリンジ、ついに固定メンバーのバンドから高樹さんひとりのユニット、という形になりましたね。

 それを経て出す最初の曲が『再会』ってなんか良いな(語彙力)。

 

Fuzzy Soul

Fuzzy Soul

  • Bruno Pernadas
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 全然知らないアーティストだったのだけど、友人がインスタのストーリーに上げているのを見て、聴き、とてもよかった。

 「世界旅行帰りのレコードコレクターのスーツケースをひっくり返したようなサウンド」と説明されている、なるほど。なんだかんだラテンの香りが強い感じもする。とにかく中々邦楽で聴かないサウンドで楽しい。

 

ナイスポーズ

ナイスポーズ

  • provided courtesy of iTunes

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 この人たち自身は新潟のご当地アイドルだそうです。

 『ナイスポーズ』の楽曲提供が柴田聡子さんなんですね。さっきファン失格みたいことを言いましたがやっぱファンでいさせてください。

 

ナイロン

ナイロン

  • provided courtesy of iTunes

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 前作『ソングライン』もかなーり好きだったけど、今回のアルバムもイケてる。

 君島さんの『向こう髪』に加えてこの曲で、今ガットギターが欲しすぎてヤバい。

 

In Undertow

In Undertow

  • provided courtesy of iTunes

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 ちょっと前のアルバムだけどたまたま聴いたときに「えーやっぱ良いなーー」となり、しばらく聴いていた。

 というだけの話ではある。

 

ヒューマノイド

ヒューマノイド

  • ずっと真夜中でいいのに。
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 ずとまよの2ndにどハマりしているというのは先月も書いたが、ここで過去作もきちんと聴いておくことにした。いや、聴いてなかったわけではないんだけど。

 ヒューマノイドが超好きだったことを思い出した。秒針→ヒュ→サターンの流れが素晴らしい。1stALの「潜潜話」では秒針とヒュが離れてしまってるんだよな。

youtu.be

  MVも特に好き。こういう感じで、歌詞が字幕的に出てくるのはボカロ界隈で一般的な文化らしいですね。

 

4.FILMS etc.

●ミナリ

gaga.ne.jp

 無神経なばあちゃんかと思っていた人がだんだんと好印象になっていく映画でした(雑)

 ある意味淡々としてはいつつも、伏線回収が巧みでていねいな映画だったと思う。

 あとはアメリカのキリスト教文化について知っているとより理解が深まる場面があったかな、と思ったり...

 

 

ノマドランド

searchlightpictures.jp

  この映画、登場人物の大半が実際にノマドライフを送っている人たちなんですよね。エンドロールで役名と本人の名前が同じ人がほとんどだったので、「あれ?」と思った。なんというか、ドキュメンタリーだ。

 作中の印象的な言葉の一つ一つが(映画のために用意されたものではなく)、帰るべき場所をもたずに生きる人々の実感から出てきたものだと思えば、感動もまた深い。

 

●ゆれる

www.yureru.com

  最初から最後まで香川照之の演技力が圧倒的。なんというか、怪演。

 もちろん話の筋もよかった。

●すばらしき世界

wwws.warnerbros.co.jp

 『ゆれる』と『すばらしき世界』は、同じ西川美和監督の作品。

 本作は扱っているテーマの重さに対してちょっとテンポがよすぎるかな、というか登場人物があまりにみなさん良い人すぎでは…という感想がないでもなかった。

 とはいうものの伝わるものは確かにあったし、台詞回しやロケーションなども記憶に残るものが多く、観てよかったと思う。原作となった佐木隆三『身分帳』も読もうっと。

 あと、これ観るために久しぶりに横浜まで行ったんだけど、いい意味で風景が変わっておらず楽しかった。

 

 

●街の上で

machinouede.com

  『花束みたいな恋をした』みたいな雰囲気の映画かな…と思っていたら、コメディかよというくらい笑えるシーンの多い映画でした。

 舞台も下北沢なので親近感があり、個人的グッドポイントでした。

 

☆最近覚えたこと・言葉☆

Apple Musicのジャンル別検索欄に「通勤・通学」というジャンルがある

・スラップ訴訟

 

4月おしまい。

カエンソサンカリウム(カガク・クラブ)

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 ここ最近は国内の作家の本を読んでばかりいたので、たまにはアメリカの小説でも読もうと2ヶ月ほど積んだままになっていたチャック・パラニュークの『ファイト・クラブ』に手を伸ばした。

 日々の合間合間に読み進めていたのだが、先日こんな一文に出くわした。

 

 ダイナマイトには不純物が混じっていたと刑事は言った。蓚酸アンモニウムと過塩素酸カリウムが混じっていた。それは爆弾が手製である可能性を示す。それに玄関のデッドボルトが壊されていた。

チャック・パラニューク著,池田真紀子訳『ファイト・クラブ早川書房,2019:155. 

  む、と引っかかったのは「過塩素酸カリウム」だった。カエンソサンカリウム。この響きには何か親しみにも似た感覚があった。なんでだっけ。

 あ、あれだ。

 

---

 10年は前になるだろうか。当時茨城県に暮らし、高校受験を控えていた僕は突如父の転勤を知らされ、それまで行く気マンマンであった「水戸第一高校」に早々に別れを告げ、何十校とある「首都圏にある自分の偏差値に見合ったそれなりの高校」を探すことを余儀なくされた。

 そうすること数ヶ月、「ここならちょっといいかも」と探し当てたのが、東京の西のほうにある都立W高校であった。

 

 早速、その年の夏休みにW高校の説明会(兼部活見学会)に参加。説明会はそこらへんに売っている受験案内書を読めばわかることばかりだったので早々に切り上げ、部活見学会を回ることにした。

 W高校の看板部だったラグビー部ではもちろんやっていけそうになかったので、室内の部活を中心に見学させてもらっていたが、その中でも一際、異彩を放っていたのが「化学部」であった。

 薬品の匂いがツンと鼻をつく理科室(これはまあどこの高校でも同じ匂いがするのだろうが)に足を踏み入れると、そこには既に同年代の子たちが15名ほど揃っており、教室の前には白衣を着た化学部長と思しき青年が立っていた(さかなクンに似ていた)。

 さかな氏は、「今日はみなさん化学部に来てくれてありがとう、早速ですが僕はこれからみなさんにお見せする実験の準備をしますから」と早口で捲し立てるや否や、彼より幾分か歳下と思しき部員何人に部の説明をぶん投げて奥に引っ込んでしまった。

 説明が終わると、さかな氏は耳当てにマスクをした状態で何やら白いボトルとハンマーを手に戻ってきた(既に不穏である)。そしてさかな氏は特に何をいうでもなく、手近にあった机の金属部分にボトルの中の粉を軽くまぶすと、これまた手近にあったビニールテープを3〜4枚切り取り、粉の上にベタベタと貼り付けた

 

さかな「さ、それではこれからちょっと面白いことが起きますのでみなさん耳を塞いでいてください」

 

 意味がわからない。面白いことが起きるってなんだ。というか耳を塞げということは「デカい音が鳴る」以外に一体何が起こるというのか。とはいえ、抗議している間にさかな氏がこの大実験を敢行して被害を被ってはどうしようもないので言う通りにした。

 さかな氏はその場にいる全員が耳を塞いでいるのを確認するや、間髪入れずにビニールテープ越しに白い粉をハンマーでぶっ叩いた

 

バァンw

 

 場の総勢15名ほど、全員が呆気に取られた顔でさかな氏に「説明しろ」と目で訴えていた。

 さかな氏はその一番の笑顔を見せると、「そう! この白い粉はカエンソサンカリウムだったんですねえ。カエンソサンカリウムというのはみなさんご存じ花火の……」

 

 全然ご存じな訳がなかったし、そこから先の説明は全然覚えていないが、このときに私の中で「カエンソサンカリウム」は(そのクソデカサウンドと共に)強烈な印象を持った言葉として刻まれたのである。

 

 

 

 数ヶ月後。結局、引越し先が横浜市になったことで都立高校を受験することもなくなり、W高校のことも忘れかけていたそのとき、ある新聞記事が目に入った。

 

「都立高校で事故 文化祭準備中に化学部員が軽いけが」

 なになに、化学部? まさかとは思うけど…

 

 そのまさかであった。その都立高校というのはW高校であったし、事故を起こした張本人(張本粉?)は「過塩素酸カリウム」だったようだ。該当の部員氏は「過塩素酸カリウム」と「赤リン」をゴリゴリと乳鉢で擦っていて(やっちゃいけないらしい)、その結果ボカンと一発やらかしてしまったらしい。

 軽いけがで済んでよかった、と思うと同時に「カエンソサンカリウム」が「過塩素酸カリウム」であることもそのとき知ったのでした。

 

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 まあそんなカエンソサンカリウムと、『ファイト・クラブ』の読書中に10年ぶりの再会を果たしたわけであった。

 しかし、そんなダイナマイトの原料になるようなシロモノを大勢の中学生の前でドッカンさせていたあのさかな氏。なんだったんだろうか。どこかで元気にしているのだろうか。

 まあ、部活見学会という場でやらかさなかったことに関しては感謝しておきたい。 

 

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東京炎上

東京炎上

  • provided courtesy of iTunes

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www.mito1-h.ibk.ed.jp

読んだ・聴いた・観た(3月)

先月に続いて仕事の方がやや忙しく、若ほったらかし気味に。

でもなんだかんだ無事できそうです。

 

 

 

1.BOOKS

●ヘッセ/高橋健二訳『郷愁』

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 中学生か高校生のときに一度読んだ作品。当時はこの作品を読むに足る人生経験もなかっただろうし、再読することで色々発見があるかな、と思って手にとった。

 実のところ確かに学生時代とは明らかに作品に対する解像度がまったく違った一方で、印象的な台詞などは10年近く前のことでも意外なほどよく覚えていてびっくりした。

 「歌えさえしたらなあ」

  

安部公房『カンガルー・ノート』

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 脛にカイワレ大根が生えてしまい、色々あって病院ベッドに乗って奇妙な冒険をする話。サカナクションの山口一郎さんが多大な影響を受けた作品、らしい。

 主人公の男がだんだんとカイワレに愛着をもっていくところとか、生えてきたかいわれを食べながら自足していくところとか、まともな感覚を超越したところで主人公にちょっと肩入れしてしまうような、そんな感覚に陥っていくのが恐ろしい。

 どんなメッセージ、どんな意味を持つ小説なんだと訊かれると難しいんだけど、どうしてか引き込まれるものがあり、2日で読み切ってしまった。 

 

●千葉雅也『勉強の哲学』

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  勉強をして学ぶことを「ノリが悪くなること」とか「来るべきバカになること」とか、面白い表現で説明してくれる本。

 勉強をしてノリが悪くなる、というのはそれまで属していた集団やコミュニティの「ノリ」に身を任せることをやめること、らしい。確かに。

 

www.youtube.com

 

寺尾紗穂『南洋と私』

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南洋群島親日的」。それは本当だろうか。****、**、***――消えゆく声に耳を澄ませ、戦争の記憶を書き残した類い稀なる記録。

 ↑この本の帯に書いてある説明文なんだけど、****に入る地域の名前、わかりますか? 僕は正直わからなかった(正解は「サイパン」「沖縄」「八丈島」)。

 南洋群島親日的かどうか以前に、「南洋」がどのあたりを指すのかすら少なくとも僕は覚束なかった。「消えゆく声に〜」とはよく言ったわけである。

 日々なんとなく過ごしているうちに見失ってしまうものや、そもそも気づくことすらない歴史の1ページは山ほどあるし、それらを「そういうもん」としてやり過ごすことは簡単だ。

 だが、こうして本に出会ったり、新聞記事で読んだりすることでそれらに気づくことができたなら、せめてそれは大切にしたい。

 

穂村弘『図書館の外は嵐

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 賛否両サイドから雨アラレの如くご意見・ご感想をブチ投げられているであろう週刊●春であるが、この本の元となった穂村弘さんの連載を生み出してくれたことに関してはまったくもって感謝するほかはない。

 穂村さんの(ほぼ)あらゆるジャンルを網羅する読書遍歴を肩肘張らずに読める、嬉しい本。『図書館の外は嵐』って、タイトルから素敵すぎ。

  

2.COMICS

藤本タツキチェンソーマン』既刊11巻

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 呆気にとられてたら第一部が完結してしまった。いろんな意味でアホのような漫画だったけど、個人的には設定も登場人物も非常に魅力的でとてもよかった。

 ジャンププラスの続編が楽しみ。

 

●町田メロメ『三拍子の娘』既刊1巻

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 この人の描くイラストが好きでTwitterとかフォローしてたんだけど、1年前ぐらいからマンガも連載し始めて、本になるのを楽しみに待っていた。

 もうすぐ紙もでるらしい。電子で先読みしたのに普通にそっちも買っちゃいそう。あと町田さん、声もめっちゃいい。

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(音源の宅録感たまらんな……都内某所のワンルームでちょっとだけ窓開けてパソコンに向かってギター弾いてる誰かを勝手に想像してしまう……)

 

●染谷みのる『刷ったもんだ!』既刊3巻

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 いわゆるお仕事漫画の範疇に入るんですかね、これは。印刷会社が舞台。

 お仕事漫画ってシリアスになりがちだよなーって(勝手に)思っているんだけど、これはもうゴリゴリにコメディ。それでいて印刷業に関する記述はおそらくかなり精確で、業界に関するいい教科書にもなると思ったり。

 絵も可愛くて読みやすいしかなり好きです。

 

3.MUSIC

変身

変身

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 とりあえず今月はこれでしょうか。ミツメは昨年のコロナ禍の時期からぽろぽろとシングルを出していて、アルバムもずーっと楽しみにしていたんだけど大正解だった。

 Gt.大竹さんが何かのインタビューで、アルバム「VI」を作るうえで改めてギターという楽器にきちんと向き合った、というようなことを言っていたけれど、その通り、バンドという形態で演奏することにこだわった、何か矜恃のようなものを感じる。

 #3「変身」は、自分の周囲でも異常にウケがよかった曲な気がします。いや本当にどの曲も好きだけど。

 

ひとくちいかが? feat. 土岐麻子

ひとくちいかが? feat. 土岐麻子

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 豪華すぎるデュエット。この曲のベースも素晴らしい。僕もベースを弾くんですが、いちばん(弾くのが)苦手なタイプのベースだ。それだけに感じる魅力もデカい。

 あと、曲に関係ない話でアレだがジャケットめっちゃよくないですか? 原色系の透明な液体って実はあんまり見る機会ないからおおーって思っちゃう。

 

 

風と小説

風と小説

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 勘の良い方はお気づきかと思いますが、ハイ、『南洋と私』の著者の寺尾さんと同一人物です。多才かよ。

 ご自身の作詞・作曲は、普段から言葉というものに愛情を注いでいることがジンジン伝わる非常に心打たれるものばかり。なんだけど、本作の1曲目『停電哀歌』のように既存の詞に新しく歌を乗せる試みもしていて、これがまた素晴らしい。

 

 

 

Sunlight

Sunlight

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 こういう「ダッチー、ダダチー」みたいなドラムの音好きなんですよね(伝われ)

 伸びやかなボーカルも魅力的、こんな風に歌えたらな……と素直に思う。

 

 

Gifted

Gifted

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 絶対に変拍子だと思ったら普通のエイトビートだったときの衝撃。スネアの位置をスタンダードなエイトからずらすことで「3拍子+5拍子」っぽく聴かせているな。ぐぬぬ

 

 あとはマジでずっとずとマヨの『ぐされ』聴いてた。強すぎるアレ。ほんまに。

 

 

4.FILMS etc.

●あのこは貴族

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  原作小説も読みましたが、併せて名作だと思いました。素晴らし。

 映画ではどうだったか曖昧だけど、小説では東京育ちとそうでない人との間にあるものを「格差」というかなり強い表現で記述している。

 (のでこういう書き方をするが)格差という社会的な課題を主題に置きつつも、一方で映画という「エンタメ」であることに飽くまで自覚的というか、見る人を置き去りにすることなくストーリーを展開していた。

 ここの両立ってめっちゃ繊細なバランス感覚がないとできないんじゃないか? と思ってる。

 

 

羅生門

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  作品の大筋は芥川龍之介の『藪の中』に沿っていると思うんだけど、タイトルは『羅生門』なんだよね。

 黒澤明の作品を意識的に観たことがあまりなかったので、今後経験値を積んでいきたいところ。

 

 

 

☆最近覚えたこと☆

・「にべもない」の「にべ」はベタベタした魚

・瓶の中でキノコを育てる「きのこリウム」なるものがある

 

3月おしまい。

環状7号線を

※この物語は事実をもとにしたギリギリフィクションです。

 

 過日の深夜0時ごろ、環七通りをチンタラと自転車で走っていたら、警察官に声をかけられた。

 

 深夜0時ごろに環七通りを自転車で駆けるという状況には、駆け人(かけびと)それぞれに理由があろうが、僕の場合なんのことはない。

 その日は仕事が早めに片付いたのでふと思い立ち、自宅のある江古田から南下して高円寺・小杉湯まで風呂を浴びに行ったのだ。その帰りである。

 ともかくも僕は警察官に呼び止められたのであった。

 

警察官(以下、「」):「さーせんッス、ちょぉっといいスかぁ」

:「(減速しながら)え、あぁッハ、はいどうぞ」

 

 私とさほど歳の変わらなそうな警官はしかし、ギリ敬語を使っていた。

 というのは、職質や交通整理での警官は、「声をかけた相手がドの付くヤンキーであろうとナメられぬように」敬語を使わないと聞いたことがあるのだ。これがタメ語であったら速攻、

「さっきチャリ乗ってたら警官に呼び止められたんやけど、初手タメ語って本当なんだな……」

 とツイートするところであるが、とりあえずその必要はないようなので、一旦話を聞いてみることにした。

 

:「お急ぎのところサーセンス。最近この地域での防犯警戒のほう強化してまして、すんませんス、自転車の防犯登録票、拝見してよろしいスかね?」

:「えっ、あっハハイ、後ろに確か貼ってると思います…」

:「ん? 『確か貼ってると思います』? 何でちょっと不確かな感じなんスか?」

:「えっ、それはその、普段特に気にしない部分ですし…」

:「いやいや、これは怪しい……確信がもてないってことは、これもしかして盗難車なんじゃないスか? ということでハイ、署まで同行願います」

 

…察しの良い方はお気づきかと思うが、現在私は獄中でこの手記を認めている

 ということはなく、普通に防犯登録票をチェックされたところまでが事実であり、以降は私の心に棲む悪意マシマシの想像力が創り出したフィクションである。

 別にナリが怪しいとかそういう理由ではなく、ランダムで数台に1台、こうしてチェックしているのだという。

 

 

:「番号は*****、ちなみに失礼スけどお名前は?」

:「あ、大橋と言います(んなことまで聞かれるのか…)」

:「あざすッス、(無線で仲間の警官に)*****、大橋さんです……目黒? 目黒区の防犯登録なんですね。この自転車ってどこで買われました?」

:「えー、中目黒ですが……」

:「中目黒で買ってこの辺で乗られてるんスね。持ってくるの結構大変じゃなかったスか?」

 

…別に良いではないか。普通に中目黒の良い感じの自転車屋さんで買って、購入当日は山手通りを爆走しつつ遥々と乗り運んできたのだ。その旨を警官に伝えると、

 

:「えっ!? あなたのようなガリヒョロクソメガネが目黒から自転車に乗って!?!? ありえないスね、これは怪しい……これもしかして目黒からシンプルにトラックで運んできた盗難車なんじゃないスか? ということでハイ、署まで同行願います」

 

…察しの良い方はお気づきかと思うが、現在私は獄中でこの手記を認めている

 ということはなく、普通に購入場所を(一応)訊かれたところまでが事実であり、以降は私の心に棲む悪意マシマシの想像力が創り出したフィクションである。

 これもあまりに遠い管轄エリアでの登録の場合、何か調べたりするのだろう。

 

 防犯登録のチェックが終わった。ポリスメンは「さあ、用は済んだ」とばかりに(実際に用は済んでいるのである)私に向き直り、

 

:「あざしたッス、OKッス。お忙しいところ失礼しましたッス」

:「あの、僕何にも知らなくてアレなんすけど、最近この辺でも盗難とかって多いんすかね?」

 

 救いようのない阿呆である。用は済んだから行っていいと言われているのに、なぜ話を広げるようなマネをするのか。しかしこれはこういった場面に限らず、私の悪いクセであった。

 特に今回は、夜道を警察に止められて「何事か」とビビりまくった挙句、ものの数分で何事もなかったかのようにことが済んでいくことに何か納得のいかないものを感じたのだ(納得しろよ。というか納得する・しないの話ではないだろ)。思えばこれが運の尽きであったのかもしれない。

 果たして、ポリスメンは一瞬驚いたような顔をして、すぐに平素の表情に戻ると続けた。

 

:「そッスね。実際多いスねー。鍵とかって普段かけられてると思いまスけど、それでももってかれることありますし。保管とかってどうされてます?」

:「あー、アパートなんで普通に部屋のドアの前に……」

:「なるほどッス、若干それ危ないかもッスね。最近は一軒家とかでも駐輪場に入り込んで丸ごとパクってく輩もいるッスから、少なくとも二重で施錠はしてもらえると……ちなみになんスけどお住まいは?」

:「あ、えと、江古田です」

:「江古田スか……あの、ここ高円寺寄りの中野スけど、こんな時間まで何してたんスか?」

:「えっ、そっ、それは……高円寺にいい銭湯があるのでちょっとそこまで……」

:「いや、でも江古田にも銭湯ぐらいあるッスよね。それを湯冷めのリスクまで冒して……チャリで20〜30分あるスよね? それに見たところ、風呂浴びてきたとは思えないぐらい薄汚いッスし……うん、これは怪しい……ということでハイ、署まで同行願います」

 

…察しの良い方はお気づきかと思うが、現在私は獄中でこの手記を認めている

 ということはなく、普通に住まいを(一応)訊かれたところまでが事実であり、以降は私の心に棲む悪意マシマシの想像力が創り出したフィクションである。

 人の良さそうなポリスメンは、実際には江古田周辺でも盗難は増えているので気をつけてほしいといったことを付け加えてくれた。

 

 さて、ポリスメンのお仕事の邪魔になっても仕方ない。サクッと話を切り上げ、挨拶もそこそこに改めて帰路に就いた。一応、ポリスメンに出会う前よりも少し速度を落とし、環七通りを北上していく。

 唐突な防犯チェックと、話に聞いたよりはずっと懇切丁寧なポリスメンの対応に、どこか拍子抜けしたような気持ちを胸に抱えつつ。

環状七号線

環状七号線

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読んだ・聴いた・観た(2月)

2月分、なんとか無事できそうです。

今月は映画も観たのでその感想も少し。

 

 

 

1.BOOKS

坂口安吾『白痴』

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 「私は悪人です、と言うのは、私は善人ですと言うことよりもずるい。私もそう思う。でも、何とでも言うがいいや。私は、私自身の考えることも一向に信用してはいないのだから(p.152「私は海を抱きしめていたい」)」

 大学時代に読んだ小説の再読。坂口安吾はどうしてか初めて読んだときから好き。その言葉の1つひとつがどこか投げやりなようでいて、一方で生きるということを極限まで集中して見直すことでしか得られないようにも思える。彼は人間という存在に類稀な関心を示し、非常に愛してもいたんだろうと思う。

 

 

●デイヴィッド・E・フィッシュマン著/羽田詩津子訳『ナチスから図書館を守った人たち』

www.harashobo.co.jp

 この本の舞台となるリトアニアは、第2次大戦中はナチス・ドイツ、戦後はソ連の脅威に晒され続けてきた歴史をもつ。そのようななかで、占領者から貴重書を守り続けた人たちの記録の本。

 64ページの記載には、ナチスの占領下にあってその日寝る場所も定まらないような人たちが、図書館が開館するや「喉の渇いた子羊のように本に飛びついた」とある。

 以前読んだ『復興の書店』(小学館文庫)という本にも、東日本大震災の直後、足の踏み場もないような被災地で、書店が営業を再開した瞬間に人が集まったという話があった。

 極限の状態にある人たちが活字に触れることを求めるのは、ひとつの普遍的なことなんでしょうか。

 

 

和田誠『装丁物語』

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  一昨年に亡くなった和田誠さんの装丁論。彼の装丁した本には僕の好きなものも沢山あるので、彼がどんな本に対し、どんな意図でフォントや絵を作ったのかワクワクしながら読み進めた。

 和田さんは、装丁を頼まれた本は通しでしっかり読むのだそう(そこまでやらないデザイナーも多いらしい)。そうしないと、その本にもっとも合った絵やデザインは生まれない、という思想ですね。

 彼自身は作家ではないけれども、文学や書物に対するひたむきな敬愛が感じられるエピソードだった。執筆や評論とはまた別に、こういう形の文学の愛し方があるんだな、という感じ。

 

岸本佐知子『なんらかの事情』

www.chikumashobo.co.jp

 英米文学翻訳家のエッセイ。
 この人が訳した、ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』を前に読んだ。これがなかなかトンでる小説なんだけど、岸本さんご自身も壊れた傘を通りがかりの花屋さんに「捨てといてください」と渡してしまったり、雪玉で銀行強盗を敢行した男に「どうか捕まらないでいてほしい」と思いを馳せたりと、モラルのネジがトンでいるところがある。

 そのせいか読んでいて結構ヒヤヒヤする本なんだけど、そのヒヤヒヤが楽しくもある。

 

宇野重規保守主義とは何か

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 政治経済については勉強し直そうと前々から思っていて、思っているだけだったので、最近やっと少しずつ本を借りて読んだりしている。

 今、一口に「保守」と言っても色々な意味合いをもつと思うけれど、この本はヨーロッパにおける「保守」の起源から順に歴史を追い、現代の「保守」ができるまでをわかりやすく教えてくれた。

  

2.COMICS

ヤマシタトモコ『違国日記』既刊7巻

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「誰のために何をしたって人の心も行動も決して動かせるものではないと思っておくといい」

「ほとんどの行動は実を結ばない まして感謝も見返りもない」

「ま でも そうわかっていてなおすることが尊いんだとも思うよ」

 ここまで読んでピンと来たら読んでくださいとりあえず。

 気が早いけど、今んとこ2021年でいちばん食らってる漫画。特に5巻は寝る前に読んだら、読んだ後3時間ぐらい寝られなくなった。

 

●山口つばさ『ブルーピリオド』既刊9巻

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 地味に追っている。藝大が出てくる漫画最近多いね? 最近でもないか。

 

いしいひさいち『バイトくんブックス1 四畳半の男』

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 いしいひさいちマジで好きなんですけど、多くの作品が化石化していて全然見つからない。この作品に関してはおそらく出版社がとっくの昔になくなっている。

 これは日藝の前にある古本屋に文字通り埋もれていた。就活中に読まない方が良いですね。

 

3.MUSIC

オー・ヨーコ!

オー・ヨーコ!

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 六本木でやっていた展示"DOUBLE FANTASY -John & Yoko"を観て3日間ぐらいその耳になっていた。
 今更有無を言わさぬ名盤ですけど、Jealous GuyとOh Yoko!の2曲は特に好き。My love will turn you on!

 

 

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 リズムセクションが電子音から徐々にアコースティックに変わっていくのが良い。Liveでドデカサウンドで聴きたいな。

 

 

Pà Pá Pà

Pà Pá Pà

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 フェラ・クティの息子だったんですね。知らなかった(さらにシェウン・クティという腹違いの弟もいる。彼もアフロビート、ファンクのミュージシャン)。アフロビートも今まであまり馴染みのなかったジャンルなので聴いていきたい。ソウルフルでカッコいい。

アルバム名からもわかる通り、込められたメッセージは強烈かつ明確。

 

 

Guard Down

Guard Down

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 アメリカの21歳のアーティストで、これが1枚目のアルバムらしい。すご。Clairoとバンドやってたりもする人みたいです(ClaudとClairoでややこしいな)

Wikipediaによると「ベッドルーム・ポップ」というジャンルになるんだそう。確かにドリーミーな音像が特徴的。ジャケットも夢の中っぽい。

 所属しているSaddest Factoryというレーベルがそもそもまだ新しいレーベルらしいのだけど、Webサイトがパソコンの画面みたいで面白かったです。見方がよくわからなかったが……(https://saddestfactoryrecords.com/ )

 

海が泣いている

海が泣いている

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 松本隆の対談集を読んで聞き直している。表題曲が名曲すぎるんだな。

 

 

サボテンガール

サボテンガール

  • アイナ・ジ・エンド
  • J-Pop
  • ¥255
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 AL全曲作詞作曲してるんすよね……才能……てか声良すぎませんかね……

 

 

Bridge

Bridge

  • YonYon
  • ネオ・ソウル
  • ¥255
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 曲もすごく好きだし、あとはジャケが好きなんです。
 この曲もメッセージ性とても強い。綺麗なメロに乗せてるのがまた。

 

Bon Dance

Bon Dance

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 昨年の緊急事態宣言中にFly with MeがJ-WAVEかなんかでヘビロテされてたのをよく覚えててずっと楽しみにしていた。
 音が分厚い、各プレイヤーのテクが高い。

 

 

はゔぁ

はゔぁ

  • ずっと真夜中でいいのに。
  • ロック
  • ¥255
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 もう丸サ進行系アーティストとか言えなくなっちゃった。今のところ「はゔぁ」が1番好き。

 シャープ4つのキーからフラット4つのキーへの転調ってこんなに違和感なくできるもんなんですね。

 

 

フィクション

フィクション

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 ふわっと浮くようなギターと堅実なリズムの取り合わせはもはや安心の域。かつ新曲を出すたびに新たなカラーが見える。
 今はとりあえずアルバムが楽しみ。

 

フィルム

フィルム

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 「創造」の感想を書けよという感じですが、新譜出たついでに昔のアルバムを聴きなおしていて色々思い出し、しんみりしてしまった。高校のときずっと聴いてたな。
 この『フィルム』という曲がとても気に入っていた。ゆるゆるとゾンビに追い回されるMVが良いんですよ。

 

4.FILMS etc.

●花束みたいな恋をした

hana-koi.jp

 

 思うところ100個ぐらいある。笑

 とりあえず「穂村弘はだいたい読んでます」で「ぐあ」ってなり、カラオケできのこ帝国『クロノスタシス』を歌うシーンで「ぬぬん」ってなり、『A子さんの恋人』が一瞬映るシーンで「ギョアーーーー」ってなった。舞台が西武線沿線でなくて本当に良かった。

 個人的には、絹さんに圧迫面接をした面接官に対して麦くんが「その人はきっと今村夏子の『ピクニック』を読んでもなんとも思わない人だよ」(だっけ)と言い放つシーンに、サブカルボーイズアンドガールズの悲しい傲慢さが凝縮されている感じがして、メチャクチャ印象に残った。

 自分が共感して、愛を注ぐ対象だったはずの作品が、このシーンでは(こう言ってよければ)敵なる他者との差異を表すための記号に成り下がってしまっているんだよね。そして、分かり合えないと断じた相手に「お前に〇〇の良さなどわからない」と突き放す思想は、彼自身のことも救ってはくれないはず。

 っつってね。

 

●心の傷を癒すということ

gaga.ne.jp

 

 ちょっと駆け足感はあったけれど、大切なところは丁寧に描いていて良い映画でした。

 しかし、「精神科は人の役に立たない」とか、「人の心など、身体を治すことに比べればどうでもよい」とか言われていた時期があったんですね。5,6年前に話題になった「文学部不要論」がふと頭をよぎった。不要じゃないと信じたいし、信じている。

 

●Swallow

eiga.com

 

 結婚を機に、日々ストレスを抱えるようになってしまった女性が「異食」に強く惹かれるようになっていく話。
 話の序盤こそ「食べ物でないものを食べること」に対する躊躇がしっかりめに描写される。んだけど、その辺がどんどんカジュアルになっていって、ごくライトなノリで本のページなんかをベリベリむしって食べるようになっちゃう。気づけばこちらも、そんな光景をむしろコミカルなものとして受け入れてしまっている。非常に巧妙。

 

☆最近覚えたこと☆

・duodenum:英語で十二指腸

・「コレラ」は夏の季語

 

2月おしまい。