エンディングテーマ

「図書館の閉館BGM」といえば何だろう。別に図書館でなくてもかまわないが、いちばん多く挙がるのは「蛍の光」ではないだろうか。次点で「遠き山に日は落ちて」あたりか。図書館で勉強か何かしていて、気がつくと天井のスピーカーから例のどこか呑気なメロディが流れてきて、さて帰るかと席を立ったという思い出がある人は多いに違いない。

蛍の光」は、もはや帰巣(帰宅?)本能を呼び覚ますトリガーとして、日本人の遺伝子に刻み込まれていると言ってよさそうである。

 

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 こちらは、お笑いコンビ・空気階段のコントのなかでも特に好きな「トイレ」である。劇中で、鈴木もぐら氏扮する癖の強いおじさんが、トイレの個室から先客を追い出すべく「蛍の光」を口ずさむシーンがある。ここで冒頭のメロディが歌われるや即座に観客の笑いが起こるあたり、「蛍の光=閉館の音楽」という図式を上手に使っていて面白い。

 

 ところで、いま私が住んでいるところの最寄りの図書館は、閉館BGMが坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」である。冬限定とかではなく、一年を通してこれである。閉館15分前になると、あのピアノの憂いを帯びた音形がフェードインしてくるのだがなるほど、これはこれで「帰らなくちゃ……」という気持ちにさせられる。

Merry Christmas Mr. Lawrence

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 それこそ冬の寒い時期、遅くまで資料探しをしているときなんかにこの曲が流れてくると風情があってよい。春、秋も意外と悪くない。ただ夏は流石に少し雰囲気が違うかな。どうせなら久石譲の「Summer」あたりでどうすかね、という気分になる。

 あと、ちょっと1日の終わりに聴く音楽としては淋しすぎるキライがある。それにやはり図書館なので、受験勉強に励む高校生なんかもいるわけで、彼女ら・彼らにとって「戦メリ」はしんどい受験勉強とセットで思い出される曲になってしまうのではないか。なにかこう曲調とも相まって、ブルーな気分になってしまいそう(受験の結果そのものがよければいいけど。そうあることを祈るばかりだ)。曲自体は大好きなんですけどね、戦メリ。

 

 改めて考えるに「エンディングテーマ」の設定って、場面を問わずすごく難しいよなあと思う。映画のエンドロールで流れる音楽なんか正にそうだ。基本的には映画の内容にあった曲調や歌詞の曲がきちんとセレクトされているのだが、まれに「そんなテンションの映画だったっけ?」と思うような選曲がされていて肝心の内容が飛んでしまうこともある。

 あと、これはあるあるだと思うけれど、本編のお尻からエンディングが始まってそのままエンドロールに入ったはいいが、エンドロールが終わる前に曲が終わってしまい、そのまま次の曲が始まるパターン。これ、嫌いとまでは言わないがあまり慣れない。「あ、まだあるのね、おっけおっけ……」と言った具合に余韻がいったん途切れてしまうのである、自分の場合は。できればこう、1曲選りすぐりの素敵なやつをパッと流してもらって、サクッと観終わりたい。音楽は音楽であとでちゃんと聴くので。

 

 動画をもう1本。

 

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 フレデリックの「オドループ」に都内各所で躍り狂う人々の映像を組み合わせた、ま、ネタ動画である。こういうのはムハハと笑って見るのが正解なのだろうが、「コロナが終了した時のエンディング曲」というコメントを見て妙に感傷的になってしまった。正直、「オドループ」がバズった当初はわかりやすい四つ打ちJ-ROCKだなあと流していたのだが。そう言われるとずいぶんしっくりくるではありませんか。

 

  Youtubeを閉じて目の前の世界を眺め回してみると、明日にでも、否、1秒後にでも終息してほしい現状がコロナの他にも山と積まれている。

 その山を眼前にして自分はどうしたらいいのか、どうしないべきなのか、わからないなりに調べ、考える日々であり、それはもちろん大事なこととわかっていて、しかしどうしても息をついて立ち止まりたくもなる。というか、立ち止まる時間がなければちょっと続かない。

 せめて立ち止まっているあいだはなにか心地よい音を側に置いて、心身が元気になるのを待つことにしようか。願わくばそれが長いトンネルのエンディングテーマであり、光明のオープニングテーマであることを祈りつつ。

再会

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