2020年、どんな年だったかは人それぞれありますでしょうし、わざわざここで語るべくもないでしょう。
たいへん特殊な1年であったことだけは確かだ。
今年印象に残った観る・聴く・読む・味わうなどなど、自分用にもメモとして残しておきます。
【映画・邦】
「『家族』の感動実話」、とまあ簡潔にまとめられてはいるが、「重層的な時間」や「喪の作業」といった大きなテーマが根底に感じられて、とても好きだった。東日本大震災からもうすぐ10年の節目だ。
この監督の作品を(意識的に)観たのは初だった。それほど大きな起伏があるわけではないけれど、ほぼ退屈する瞬間なく観れました。邦画は、そもそも観たのがこの2本ぐらいかも。
【映画・洋】
「90年代半ば」はちょうど僕が生まれた頃なのだけど、その時期のアメリカのストリートカルチャーはこんな感じだったのかな、と素直に想像できる映像づくりだった。筋書きや見せ方については、1回観ただけでは語れるほどの感想を持ち帰れなかったけど、レイがスティーヴィーに新しいボードをくれるシーンはグッときたな。
超最近観たやつ。タイトル通り肖像画がひとつのキーなんだけど、僕の尊敬する母校の教授の言葉を借りると、他にも「音楽」や「文学」をも鍵として、職業画家が芸術画家へと昇華していく過程を描いた作品。「この世界に芸術が存在する意義」を捉えようとする製作陣の気概が伝わる。
【レコード・シングル編】
自粛期間と言われた春ごろに出たシングル群の1枚。やっぱりこういうUKテイストの入ったバンドサウンドは大好きです。
くるりはもうどういうジャンルの曲作ってきても驚きませんが、今回のこれはだいぶ新鮮味があってクセになった。結構リピートした。歌詞もそうとう攻めてる。
#3の「友達」が一番好き。ドリーミーかつフォーキーな曲調で、「昼下がりに近所の公園とかで聴きたいな〜」なんて思ってると、ぎょっとするような歌詞を放り込んでくる感じとてもよい。
【レコード・アルバム編】
君島さんは出会ってから(…というのは「最初に聴いた」という意味でもあるんだが、実はちょっとだけお話する機会にも恵まれてました。立ち話だけど)ず〜っとチェックしているアーティスト。このアルバムも全部好きなんだけど、先行シングルでもあった「火傷に雨」が好きすぎる。
Dua Lipaは陽キャの音楽やと思って勝手にスルーしてたんだけどとんでもない、良い良い。#9 Break My Heartが非常に有名かと思うけど、#2 Don't Start Nowのベースがクッソカッコいいかつ曲を殺さずでほんと良い。
今年は(というかいつも)音楽に詳しい諸先輩方にいろいろ教わっています。そんなある先輩の書いた記事で紹介されていたのを見て、聴きました。ちょーハマった。正直に言うと、このアルバムの存在知ったの2週間前とかなんですけど、年末に駆け込めて本当に良かった。各楽器とボーカルの絶妙な軽さと重さのバランスが、もう。そしてドラムのタイトなこと。こういうドラムがいちばん好きかも。
【ライブ】
THE BIRTHDAY GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020@NHKホール
こんな1年だったもんで、ライブらしいライブはこれぐらいしか行ってねえ()友達がチケットを取ってくれて行けました。チバユウスケって日本でいちばんカッコいい52歳じゃない? 「お前の未来はきっと青空だって言ってやるよ」なんてドベタなリリックを一抹のダサさも感じさせずに歌えるの、この人ぐらいじゃなかろうか。
【まんが】
圧倒的ベストかな、と思える作品。設定は割と突飛というか、「そんな生活してる人らいるかよ…」という感じなんだけど、その中の人間模様に浮かび上がる妙なリアリティが心を掴む。あと、タイトルと表紙からは想像しにくいんだけどかなり笑えます。ギャグ漫画としてのクオリティも高い。
ああ待ってこれもかなり圧倒的な力持ってるわ。こちらは阿佐ヶ谷やら谷中やら実際の地名がバンバン出てきて、「あーこういう生活してる人って東京に500人ぐらいいるんだろうな」というのが浮かんじゃう感じする。この漫画は「モノ」に意味を持たせて重要なファクターにするのが非常に巧い。いや、もちろん人物の描写も素敵なんだけど。7巻で完結したんですが、7巻の最後数ページでマジ鳥肌たった。
夏頃のある日、同時に5人ぐらいからレコメンドされて「じゃあ読んでみっか」と帰り道に即3巻まで買った(なんだそのバイタリティは)。情報量の多いこと多いこと。推しが出てきても秒で○ぬし。だがこのテンポ感が案外ハマる要因かも。初めて一気読みしたジャンプ漫画です。
☆番外編☆
絵が超好み。内容はユルッとした日常系(「親に捨てられちゃったけど…」ってコピーだけど全然ドロついてないよ)。更新が楽しみ。
【本】
※これは特に2020年に出版されたとかではないです。
岸さんの作品は一切の虚飾がなく、「そこにいる人」「そこにあるもの」を伝えてくれる媒体として信頼を置いている。この作品も、「こういう人がいました」というありのままの事実を伝える質的社会調査の結果なんだけど、それがどうしてこうも心を打つのだろう。世の中まだまだわからないことだらけだけれど、それでもこの本を読んで、少しだけ世界に対する解像度を上げられたように思う。
「本はただの『情報』ではない。人々にとって『生活必需品』だった」。東北の被災地の書店を追ったルポルタージュ。曲がりなりにも、本や雑誌の流通に関わる人間としては勇気づけられる内容ばかりで、久しぶりに本を読んで目頭が熱くなった(イシグロ『わたしを離さないで』以来かな)。決して綺麗事ではなく、地方書店の現実について真摯に向き合っている一冊。
僕は全く酒を飲めないのだが、この小説に描かれているアル中さんの姿がどうにも他人事には思えなかった。
「教養」のない人間には酒を飲むことぐらいしか残されていない。「教養」とは学歴のことではなく、「一人で時間をつぶせる技術」のことでもある。
この一節にギクっとした人は多いのだろう。
【コーヒー】
●ぶな(江古田)
今年もほんとお世話になりました。ブレンド超好き。キリンジの高樹さんもラジオでオススメしていたと聞いてテンション上がった。
●それいゆ(西荻窪)
●夏への扉(青梅)
アイスコーヒー美味しかったです。そうふらっと行ける距離ではないんだけど、そのぐらいの距離感が有り難いのかもね。
【ラーメン】
●破顔 おおびる(江古田)
今年もほんとお世話になりました。汁なし超好き。ってか汁なししかくってないわ今年。おうち破顔、結局やらなかったなあ。だって近いんだもん。
●太陽(江古田)
営業時間、価格設定ともに「良心」の擬人化(擬店化?)のようなお店。自粛期間も餃子とチャーハンのテイクアウトでお世話に。高円寺の店舗も行きたいね。
●美志満(桜台)
学生時代から馬鹿みたいなラーメンばっかくってた所為で内臓がバグり申したとき、体に優しい麺を求めてたどり着いたのがここ(麺を求めるなというツッコミは受け付けません)。澄んだスープが染み渡る。チキンスープって偉大。
ってなとこでしょうか。終盤完全にめんどくさくなってきてるね。まあいいや。
良いお年を。