読んだ・聴いた・観た(4月)

 

 やっぱテレビがあった方がいいのではないか、と最近思い始めている(いま住んでいる部屋にはない。 引越しのときに、面倒だから当分テレビはいいやと思って買わず、以降ずっとそのままにしている)。

 ちょっと前にたまたまテレビドラマを見る機会があり(「コントが始まる」)、普通に面白かった。PCでもテレビ番組見れるけど、やっぱテレビドラマはテレビで見たいよね。

 以下今月のやつです。

 

 

 

1.BOOKS

伊藤亜紗 編『「利他」とは何か』

books.shueisha.co.jp

 伊藤さんの著作は過去に『どもる体』(医学書院)、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)を読んでおり、どちらも興味深かったので新刊を必ずチェックしている著者のひとり。  

 この本には編集としてかかわっており、各章の執筆陣も非常に魅力的な面々だったので手にとった。

 若松英輔さんによる、柳宗悦の『民藝』の思想から「美」と「利他」を結びつける論考が面白かった。

 

佐々木敦『ニッポンの音楽

bookclub.kodansha.co.jp

 そういえば日本のポップス音楽の歴史ってあんまりよくわかってなかったな、と思い手にとった1冊。戦後日本の「リスナー型」ミュージシャン(特に海外の音楽に積極的にアクセスして、国内で自分の音楽に昇華していった人たち)の系譜を辿るかたちになっている。

 取りあげるアーティストが(大きくは)5〜6組と非常に絞られているので、これをもって「ニッポンの音楽」とはタイトルが少々チャレンジングな気がしないでもないけれど、はっぴいえんどYMO渋谷系などの面々がどんな音楽に影響を受けたのかわかりやすく知ることができたし、クラフトワークやアズテック・カメラあたりのアーティストを聴き直す機会にもなったのでよかった。

 

関口良雄『昔日の客』

natsuhasha.com

私は常々こう思っているんです。古本屋という職業は、一冊の本に込められた作家、詩人の魂を扱う仕事なんだって

 などと言われたら読みたくなってしまうではないですか()

 1年以上は前になると思うが、大森のあるコーヒー屋さんに行ったときにおすすめされた本。そのときは持ち合わせがなくて買えず、最近になってようやく池袋のジュンク堂で見つけ、買うことができた。

 かつて大森にあった古書店の店主のエッセイ。いわゆる文学者の文章ではないので文壇で高く評価されたとかそういうものではなく、実際にしばらく絶版になっていたそうなのだが、夏葉社という「ひとり出版社(意味はそのままで、社員一人で編集〜販売までやっている会社。実はいくつかあるらしい)」が復刊させたのだと。いい話。

 著者が別の古書店に行ったとき、有名な文学者の伊藤整に間違われ、しばらくその体で通したという話が笑えた(しかもその後本人に会ったらしい)。

 

中井正一『美学入門』

www.chuko.co.jp

 美学に関する基礎的なトピックを概説してくれるとか、美学の歴史を追ってくれるとか、そういう本では実はない。そういう意味では「入門」というタイトルに引っ掛かりを覚える向きもあるのかも。

 でも、所々に「おっ」と引き込まれるような一文があり、それらは「美しさ」が持つ力を的確に説明するものになっていた。良い本だと思います。

例えば人を殺すことの目的でできた刀の中に、いつの間にか、いらだったり、血迷った心を寂めるような感じを持つ秩序と線が、現れたりするのである。つまり、めったに人を切ってはならないという反対のこころを、人間に教えていることになるのである。(P.20)

(いや、めったにというか絶対切っちゃダメだと思いますけどね?

 

●ヘッセ『シッダルタ

www.iwanami.co.jp

 先月に続いてヘッセ。

 実在のブッダ=シッダルタの名前を借り、架空の人物が一切を愛する境地に至る小説。

 下記の引用が印象的だった。賢者として一段高いところから望む悟りと、人々と同じ目線で眺める悟り。

 今は人々を見る彼の眼もこれまでとは違ってきた、以前のような賢い誇らしい眼ではなくなった、その代りにその目は温かさと関心と同情とを増した。普通の旅人、小児人種たち、商人、軍人、女たちを渡して漕ぐときにも、これらの人々が今までのように縁のない他の世界の人々とは思えなくなった。(p.176)

 

町田康『猫にかまけて』

bookclub.kodansha.co.jp

 猫と共に暮らしたいという願いが長年ある。町田康のこの猫日記を読んでその想いを改めて感じた。

 とはいえ、どうしても我々人間より先に向こう側へ行ってしまうことの多い彼ら。そういう部分もありのままにきちんと記録されているので「猫猫ー❤️」という軽薄な感想に陥ることはきちんと防がれる。

 

2.COMICS

香山哲『ベルリンうわの空』

www.eastpress.co.jp

 これも池袋ジュンク堂の地下1階、お気に入りの一角で見つけて買っ……てから半年ほど積んでいた。

 人々が動物や幾何学模様の組み合わせでできたキャラクターで描かれていて面白い。ベルリンの街がもつ多様性を表現してるんですかね。カフェやお店の雰囲気がいい感じに描かれていて好き。

 でも向こうは向こうでアジア人に対する偏見がある人もいるみたいですね。そういう面も隠さずに説明されているので好感。

 

沙村広明竹易てあし漫画全集 おひっこし』

kc.kodansha.co.jp

 BRUTUSのマンガ特集で見かけて買ったんだと思う。絵がちょい癖強い。笑

 一昔前のバンドやってる大学生ってこんなんだったんかなあ、と想像は膨らむ。

 あとイタリア語の先生好き。

 

池辺葵『私にできるすべてのこと』

books.bunshun.jp

 「AIが人の仕事を奪うだなんて誰が言ったのだろう」というのが帯のコピーだけど、実際気になっている人は多いのではないかと思う。僕も気になるし。

 上の理由でAIが大量に廃棄された未来が舞台。そういう環境のなかでAIと人間の共存を試みる人たちの話。

 

●カシワイ『光と窓』

www.leed.co.jp

 児童文学の作品をマンガの形に落とし込んだ作品。こういう形態ってストーリーがよく知られている&固定なぶん絵で勝負するしかないだろうし、すごくハードルが高そう。

 ですがその絵が本当に綺麗で読み応えがあります。

 

3.MUSIC

ファイトクラブ

ファイトクラブ

  • 柴田聡子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 柴田さんに関しては一応好きなアーティストであると公言してきたつもりでした。

 しかし。先日彼女のライブDVDを観たとき、マジで知らない曲が多くて悲しかった。まあなんのことはない。初期の曲をしっかり聴いていなかったのでした。

 なのでこれは備忘録兼。

 

向こう髪

向こう髪

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 君島さんの作品であんまり聴かなかった感じのコード進行で新鮮だった。

 ガットギターの音が心地いい、というかギター超上手い(何を今更)

 本人のインタビューでガットギターの音を「独り言のよう」と表現していたけれど、非常に的確だと感じる。

 

www.youtube.com

 

My Eyes

My Eyes

  • provided courtesy of iTunes

https:

 コロナ禍で家に居なければいけないファンのためか、TRAVISが「RELAX」とかのテーマを決めてプレイリストを作り、公開してくれている。

 それで色々久しぶりに聞きました。My Eyesは僕がギターをやろうと思ったきっかけになった曲。懐かしー。

 

The Boy Wonders

The Boy Wonders

  • アズテック・カメラ
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 上記の『ニッポンの音楽』を読んだあと、アズカメ聴き直し大会をしてました。

 小沢健二小山田圭吾あたりの「渋谷系」に影響を与えたアーティストの筆頭でありつつ、アズカメ側としても坂本龍一へのリスペクトを公にしていたりなど、日本の音楽との関連が深いみたい。

 この曲はベースラインがかわいい。

 

Presence I (feat. KID FRESINO) [with 3exes]

Presence I (feat. KID FRESINO) [with 3exes]

  • STUTS & 松 たか子
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 アーティストの組み合わせが良すぎる。

 これテレビドラマの曲らしいんですね。んーやっぱテレビ欲しいな。

 

再会

再会

  • KIRINJI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 キリンジ、ついに固定メンバーのバンドから高樹さんひとりのユニット、という形になりましたね。

 それを経て出す最初の曲が『再会』ってなんか良いな(語彙力)。

 

Fuzzy Soul

Fuzzy Soul

  • Bruno Pernadas
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 全然知らないアーティストだったのだけど、友人がインスタのストーリーに上げているのを見て、聴き、とてもよかった。

 「世界旅行帰りのレコードコレクターのスーツケースをひっくり返したようなサウンド」と説明されている、なるほど。なんだかんだラテンの香りが強い感じもする。とにかく中々邦楽で聴かないサウンドで楽しい。

 

ナイスポーズ

ナイスポーズ

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 この人たち自身は新潟のご当地アイドルだそうです。

 『ナイスポーズ』の楽曲提供が柴田聡子さんなんですね。さっきファン失格みたいことを言いましたがやっぱファンでいさせてください。

 

ナイロン

ナイロン

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 前作『ソングライン』もかなーり好きだったけど、今回のアルバムもイケてる。

 君島さんの『向こう髪』に加えてこの曲で、今ガットギターが欲しすぎてヤバい。

 

In Undertow

In Undertow

  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 ちょっと前のアルバムだけどたまたま聴いたときに「えーやっぱ良いなーー」となり、しばらく聴いていた。

 というだけの話ではある。

 

ヒューマノイド

ヒューマノイド

  • ずっと真夜中でいいのに。
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 ずとまよの2ndにどハマりしているというのは先月も書いたが、ここで過去作もきちんと聴いておくことにした。いや、聴いてなかったわけではないんだけど。

 ヒューマノイドが超好きだったことを思い出した。秒針→ヒュ→サターンの流れが素晴らしい。1stALの「潜潜話」では秒針とヒュが離れてしまってるんだよな。

youtu.be

  MVも特に好き。こういう感じで、歌詞が字幕的に出てくるのはボカロ界隈で一般的な文化らしいですね。

 

4.FILMS etc.

●ミナリ

gaga.ne.jp

 無神経なばあちゃんかと思っていた人がだんだんと好印象になっていく映画でした(雑)

 ある意味淡々としてはいつつも、伏線回収が巧みでていねいな映画だったと思う。

 あとはアメリカのキリスト教文化について知っているとより理解が深まる場面があったかな、と思ったり...

 

 

ノマドランド

searchlightpictures.jp

  この映画、登場人物の大半が実際にノマドライフを送っている人たちなんですよね。エンドロールで役名と本人の名前が同じ人がほとんどだったので、「あれ?」と思った。なんというか、ドキュメンタリーだ。

 作中の印象的な言葉の一つ一つが(映画のために用意されたものではなく)、帰るべき場所をもたずに生きる人々の実感から出てきたものだと思えば、感動もまた深い。

 

●ゆれる

www.yureru.com

  最初から最後まで香川照之の演技力が圧倒的。なんというか、怪演。

 もちろん話の筋もよかった。

●すばらしき世界

wwws.warnerbros.co.jp

 『ゆれる』と『すばらしき世界』は、同じ西川美和監督の作品。

 本作は扱っているテーマの重さに対してちょっとテンポがよすぎるかな、というか登場人物があまりにみなさん良い人すぎでは…という感想がないでもなかった。

 とはいうものの伝わるものは確かにあったし、台詞回しやロケーションなども記憶に残るものが多く、観てよかったと思う。原作となった佐木隆三『身分帳』も読もうっと。

 あと、これ観るために久しぶりに横浜まで行ったんだけど、いい意味で風景が変わっておらず楽しかった。

 

 

●街の上で

machinouede.com

  『花束みたいな恋をした』みたいな雰囲気の映画かな…と思っていたら、コメディかよというくらい笑えるシーンの多い映画でした。

 舞台も下北沢なので親近感があり、個人的グッドポイントでした。

 

☆最近覚えたこと・言葉☆

Apple Musicのジャンル別検索欄に「通勤・通学」というジャンルがある

・スラップ訴訟

 

4月おしまい。