2024年1月 Records & Live

 今年もできる範囲で、聴いた新譜などなどを記録しておこうと思う。一部海外の作品などは去年リリースのものもあります、1月なので……。

 

●Records

ORQUÍDEAS – Kali Uchis

・昨年もアルバムを出していたKali Uchis、けっこう短いスパンで新譜を出していた。前作でも聴けたメロディセンスやポップネスはそのままに、より踊れて、ジャンル的な幅も広くなっている印象がある。また、コロンビアにルーツがあるということで前作でもスペイン語を交えて作詞していたが、本作では全編でスペイン語がフィーチャーされている。

 ざっくり前半がダンス・ラテンで、だんだんとエレクトロニックやレゲトンに寄っていくような印象。前半では#2「Me Pongo Loca」と#4「Pensamientos Intrusivos」、後半では#11「Labios Mordidos」、#13「Heladito」が好きだった。

 

It's Getting Brighter – sleep well.

・今回はじめて音源を聴いたアメリカのインディーズバンドなのだけど、すごく好きだった。古いピアノと環境音のSEで始まるイントロはある面、手垢のついたモチーフではあるけれど、その後に続く楽曲とのマッチングがしっかり成立しているのでいいのかなと思う。

 本編は表題曲・#2「It’s Getting Brighter」から始まる。サックスやストリングスを入れたわりとゴージャスなサウンドに、シンプルな良メロが乗る感じが却って衒いがなくてよい。 全体的に柔らかで聴きやすい楽曲が多いなか、楽器隊の高いテクニックが垣間見える#4「Heavy Lifting」のような曲もあったりして飽きない。

 

Lahai – Sampha

・昨年のアルバムだが、今年聴いたので入れてしまう。イギリスのシンガー、トラックメイカーで、多くのビッグネームとも親交がある。恥ずかしながら、私自身はきちんと聴くのは今作が初めて。

 全体的にピアノが多くフィーチャーされたアコースティックなトラックと、ドラムンベース風のキリッとしたリズムが絡む音像が面白い。スネアがとにかくドライでハイピッチなイメージを受けたが、リズム自体は表情に富んでおり、ついつい聴き入ってしまう。

 #4「Suspended」では特徴的なファルセットが存分に聴けつつ、メロやコードはトランシーで、個人的には非常に好みな1曲だった。

 

EKKSTACY – EKKSTACY

・シャッター速度おそめで撮った、煙草を片手にボブヘアをなびかせる女性のジャケットを見て正直最初は身構えた。チャラめのサブカルボーイズ&ガールズが好きそうな感じを受けてしまったのである。

 実際に聴いてみるとジャケットから受けた印象とは少し異なる、ストレートなギターロックのサウンドが耳に飛び込んできた。結論から言うとどの曲もかなり好きだった。

 The Cureあたりの80年代ロックに影響を受けているらしいのだけれど、#3「i guess we made it this far」などを聴くとなるほど、という感じがある。ゴシック、サイケあたりにも通じるものがありそう(アーティスト名もEKKSTACYだし。XTCも当然聴いていそう)。

 

らんど – ZAZEN BOYS

ZAZEN BOYSは、昨年のSHIN-ONSAIでライヴを観た。その際にTHIS IS 向井秀徳が「次のアルバムはもう全部録っております」と言っていたのだが、意外に早く出た。

 先のLIVEで鬼気迫る演奏を聴き、音源化を楽しみにしていた#2「バラクーダ」、#4「チャイコフスキーでよろしく」などは、レコーディングならではのギュッと締まった音像で聴くとまた違った風景が味わえてよい。

 祭囃子のようなリズムに生々しいリリックが乗る#10「永遠少女」は本作のなかでも必然的に重要なナンバーになっている(向井氏曰く「話題になるとは思っていた」ものの、作品自体は2022年2月以前に作られたものだそうだ)。居住いを正して聴きたい1曲。

 

awake&build – yama

・yamaはなんだかんだで3年ぐらい追っているのだが、アルバムとしては過去一番好きかもしれない。

 なんとなく歌い手出身のシンガーは打ち込みサウンド多めな印象を持っているのだが、yamaはメジャー以降、けっこうバンドサウンドにこだわっているっぽいのが興味深い。本作もジャンル的には幅広いものの、全体的に生ピアノorギターを前に出している感じがある。

 フェイバリットトラックは#6「灰炎」。お手本のようなロキノンサウンドで、落ちサビの四つ打ちなんかはもはや2010年代感すらあるが、今敢えてこの音像を出すその心やいかに。1曲前の#5「slash」も好き(「水星の魔女」は観ていないけど…)。

 

HAPPY – group_inou

group_inouとの出会いは確かラジオだった。パスピエがMCを務めていたころのKINGS PLACEでナリハネ氏が「eye」を流しており、軽い衝撃を受けた。MVを見てさらにしっかり目の衝撃を受けた。

 私がgroup_inouを知るのとほぼ同時に活動を休止してしまったのを惜しく思っていたところ、ここへ来て新しい音源を聴けるのを嬉しく思っている。#1「ON」、ミッドテンポの心地よいリズムの中に先述の「eye」のメロディラインが見え隠れするのが面白い。敢えてのセルフオマージュか。#3「HAPPENING」のピコピコシンセとミニマルなリズムの絡み合いも楽しい。リリックスは相変わらずわかるようでわからない。なんだ、「夜中に里芋出てくるような 14時以降」って…。

 

The world is finally quiet – Ólafur Arnald

アイスランドの作曲家で、名前は「オウラヴィル・アルトナルツ」と読むらしい。生楽器を中心に据えたアンビエント系の音楽性。

 フィーチャリングにピアニストのアリス=紗良・オットがいて、お、となった。この人の名前は聞いたことがあった。確か普通にクラシックを弾く人ではなかったか。彼女がピアノを弾く#2「Reminiscence」を聴いてみるとピアノはまあ地味で、ストリングスの方が余程前に出ている。なかなか贅沢な人選だなあと少し思う。

 他にも教会音楽風の作品やヴォーカルが入っているものもあり、元々クラシックを聴いていた耳にはかなり馴染みがよかった。と思っていたら、本人はハードコア系のドラマーだったことを知ってたまげている。

 

Sol María – Eladio Carrión

・Kali Uchisに続いて2枚目のスペイン語圏アルバム(たまたま)。こちらはプエルトリコアメリカ人のラッパー。

 #5「Sigo Enamorau’」などレゲエ風の楽曲が印象的だったので少し調べてみると、どうやら「レゲトン」というジャンルがあるらしい。初めて知った。パナマを起源とするジャンルで、レゲエをベースとしつつヒップホップの影響のもとで再解釈され、プエルトリコのミュージシャンによってダンスホールレゲエとしてブラッシュアップされたものだそう。中米の音楽も奥が深い。

 Eladioはラッパーということでヒップホップ色が強めだが、楽曲の奥にさまざまなルーツやリスペクトが見える感じは興味深い。

 

Pick-Up Full Of Pink Carnations – The Vaccines

・特にキャリアの長いバンドは、どんどん音楽性を変えてリスナーをビビらせていく系と、一貫した音楽性の元でやっていく系とがいると思うが、The Vaccinesは間違いなく後者だと思う。

 歪みというよりもはや音割れのようなギター、真っ直ぐなエイトを刻むドラムス、延々とルートを弾き続けるベース……。それでも古臭さを感じさせないのはメロディの良さとサウンドプロダクションの功績だろうか。

 #2「Heartbreak Kid」、#4「Discount De Kooning(Last One Standing)」あたりの「ヴァクシーンズです」みたいな曲も好きだし、#6「Sunkissed」のようなミッドテンポの曲もいい。なんとなくフジロックよりサマソニで聴きたい。

 

●Live

1月は特にライヴ観覧せず。去年めちゃめちゃ行っていたので落差が結構ある。一方で出演は2回。久しぶりに人前でベースを弾きました。