数日前に人とした会話。
「白子ってこの前久しぶりに食べたんだけど当たり外れあるよね」
「そう?」
「悪いやつはほんとに生臭い」
「新宿の『犀門』っていう居酒屋の白子天めちゃくちゃ旨いよ。生臭さ一切ない」
「サイモン? どういう字?」
「室生犀星の『犀』に、門は普通の門。大門とかの」
ここで僕は室生犀星の「犀」を、見ないでは書けないことに気づいた。金木犀の「犀」でもある。こちらの読み方はややこしいことに「セイ」だ。どちらにせよ書けないことに変わりはない。
室生犀星という人物を知っており、読み方も知っており、その名に入っている「犀」という字を新宿三丁目の素敵な居酒屋と共有していることまでわかっている。
じゃあ書いてみて、と言われたら、書けない。人間の記憶ってこんなもんである。
そういう字結構あるな。憂鬱の「鬱」とか「躊躇」とかね。国語が特別得意でなくても普通に読めるでしょう、でも見ないで正しく書けと言われたら絶対に無理。
さておき、室生犀星は字面が書けないばかりか、読んだことがなかった。
本は結構読む方だと前のブログに書いたばかりなのに残念な感じである。
名前はよく聞くのである。
ついこの間行った馬込の古書店(バーが併設されていてこれが非常に雰囲気がよい)の店主は僕とそう歳が離れていない方で、犀星を愛読とのことだった。
(この本は犀星ではない)
あとは昔参加していたバンドで対バンしたソングライターの方ーーテレキャスター1本を相棒に座って歌う。声量とピッチが半端ないーーは、オリジナルも書くが犀星の詩に曲をつけて歌うなんてこともしていたらしい(ってそのライブハウスの店長に聞いた)。
(この曲は武満徹の作詞作曲)
と、そういう方々が読んでいるイメージである。
で、僕は影響されやすいので、早速犀星の小説を買って読んでいる。
今のところ「?」な部分が多い。早く犀星の良さを理解できるようになりたい。
ここまで書いて、僕はまだ「犀」を見ないでは書けない。