夏の頭から東京の西の方にある感じのよい街で一人暮らしをしているのだが、昨日ついに、
出た。
名前を出すと呼ばれてまた出てきてしまう気がするので伏字で、G。もうおわかりですね。
外出から帰宅した夜9時頃、溜まっていました洗い物を処理しようと台所に立ちましたら、oh。視界の端にこげ茶色のウゴメき。
「人間が絶滅しても奴らは生き残るってよく言うよね笑」
「ダンボールの隙間とかに潜むらしいんでその辺は早く捨てた方がいいらしいっすね」
「南米の森にいるのはめちゃくちゃ綺麗らしいよ、あ、色の話」
「マジで生命の危機を感じたときだけ飛ぶんだって」
……あああ。奴に関する雑学や伝聞が走馬灯のように脳裡を走る。しかし、実際に奴に遭遇した今この瞬間、そんな雑学たちは何の役にも立たないことを嫌でも実感してしまう。
ふと素面に戻ると奴の姿は既にない。アワアワしている間に見逃したのだ。
そうだ、あれだ。Gの捕獲といえば。咄嗟にサンダルを突っ掛けて外に飛び出す。
……雨。昼間は晴れだったのに。
こんな状況にもかかわらず、頭の中では「こんな日に限って突然雨は降り出してくる〜♪」と石崎ひゅーいが歌い始める(ちょっと前に書いた水戸の話参照)。自分ながらつくづく呑気な音楽脳だ。
閉店間際の薬局に駆け込み、「××ホイホイ」とついでに虫除けシートを掴んでレジへ。
レジのお姉さん「(僕の片手にある傘を見て)あれ、雨ですかあ」
僕「結構降ってますよ〜、日中は晴れてましたけどねえ」
お姉「お気をつけてくださいねえ」
だから呑気か。そもそも閉店間際だし、こっちはこっちでGとの攻防戦の最中だろ。呑気の渋滞だ。どうも人間、差し迫った局面で妙な落ち着きを見せる。
帰宅し、色々と残念な感情を抱えながらホイホイを組み立てる。少しでもテンションを上げようと、RCサクセションの「雨上がりの夜空に」を(近所迷惑にならない程度に)デカめにかける。
組み立てながら、そのデザインのポップさに面喰らう(ホイホイを買ったのは実は初めて)。
何だその眼は
何度でも言う。呑気か。
捕獲という目的に対して、あまりにも穏やかなデザインすぎはしないか。
差し迫った何かに対して、殊更クッキリと立ち現れてくる場違いな落ち着き。一体なんなんだろう……