杉の花言葉

 本格的に花粉症がしんどい時節になって久しい。前の記事でも花粉症の話をしたのに、またまたしてしまっているわけだが、そのぐらいには日々の生活を蝕んでいるということでご理解いただきたい。わざわざ書き連ねるまでもないことだろうが、目の痒みとクシャミ・鼻水による物理・精神双方からのストレス攻撃により、大げさにではなく朝気持ちよく起きることすらままならない。

 

 「病院に行ったら?」「薬を飲んだらいいよ」という類のアドバイスはこの場合、控えていただきたい。病院に行けばお金がかかるし、薬を買うにももちろんお金がかかる。この時点で、花粉症の人はそうでない人に比して要らん経済的ディスアドを被っておるのである。彼ら(というか僕ら)はこういった理不尽と日々闘っているのじゃ、という現実を飛び越して、軽々と「病院行っといで」などとそういうのは、もう一度言おう、控えていただきたい。こちらからしたらそないなことはわーっとるし、根本的な解決にはなっていないのである。

 薬。経済的ディスアドに関しては上記を参照してもらえればよろしい。んで、私としてはタダであげると言われたとてあんまり飲みたくない。というのも、花粉症の薬は総じて副作用がハッキリ出るからだ(私調べ。副作用が少ないのがあれば教えてください)。たしかに服用すれば、クシャミ・鼻水といった症状は軽くなる。だがしかし、代償として、「日中に眠気が来る」とか、「口が異常に渇く」とか、とにかくそのテの地味にいやーな症状がジワジワと現れるんである。

 花粉症などというのは、もう罹った時点で詰んでいるんです。

 

 その症状ならびに社会・経済的負担のデカさに対して、字面が不釣り合いにファンシーなのも花粉症のいやらしいところである。お花の粉ですよ。しかし事実、杉が咲かせるお花の粉が原因物質である以上、これに勝る合理的ネーミングはないのだろう。うむむ。何か腑に落ちん。

 

 ところで個人的な話をすると、一般論として「花」の話をするならば、私は花が好きな人間だと思う。街に咲いている花の名前はわりと分かる方だし、日常的に花屋さんに立ち寄って生花を買ったりもする。

 そういう「花好き」を自称する人間としては、やはり杉の花も愛してやらなければ筋が通らないのではないか。20年も花粉症をやっていると、もはや杉の花に対するダイレクトな憎悪は薄れており、上のような考えすら浮かんでくる訳である。

 

 杉の花について調べてみよう。まず見た目だが、花びらがあってクキがあって、という洒落たデザインではない。開く前のマツボックリを小さくつづめたような姿をしている。まあこれはこれで可愛らしいと言えなくもない。うむ、ルックスについては及第点としておこう。

 

 次に花言葉だ。こんな、と言ってはアレなのかもしれんが、こんな花にも一丁前に花言葉があるのだ。それでは見てみよう。

雄大」「堅固」「あなたのために生きる」

 

 ……20年来の付き合いの僕のために、アレルゲンとして幅を利かせるのをやめて生きていってはくれませんか?

 

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ちなみによく調べてみると、厳密には「あなたのために生きる」が花言葉なのはヒムロスギ、もしくはヒマラヤスギらしい。ヒムロスギはヒノキ科の園芸品種、ヒマラヤスギはマツ科の常緑樹で、それぞれ分類学的には花粉を飛ばす杉とは別物のようである。やはり杉は我が道を往くタイプということか。