共感性ビビリ

 例えばテニス選手なんかが、プレーが上手くいかないときなんかにラケットをコートにぶつけて壊しちゃうことがあるでしょう。しばしば批判の対象にもなる。ああいった光景を見るといつも「ウ」と心苦しくなる。

 それは「乱暴でやだなあ」とか、「何も壊すことないのに」とかそういうことではない。
 じゃあなぜ「ウ」になるのかというと、同じ状況だったら私も間違いなくラケットを破壊するであろうからだ。言ってみれば共感性羞恥に近いのだろうが、別に恥じてはいないしなあ。共感性ビビり、共感性ドキドキといったところか。

 Instagramでよく流れてくる「実はモテない人の特徴7選」みたいな投稿には、必ずと言っていいぐらい「物に当たる人」というのが入っている。「実は」もなにもそんな奴わかりやすくモテねーだろうが。だがそれらの投稿を見るとき、心の中の小さなデストロイヤーから目を逸らさずにはいられない。

 私の好きなとあるバンドのWikipediaを読んでいたら、元ドラマーのエピソードとして「仕事の忙しさからパンクし、パソコンをドリブルしながら帰った事がある」と書いてあった。本来ここは笑うところなのだろう。でも私は「あぁ、いいな」と思った。私もパソコンをドリブルしながら帰りたい。実行に移さないのは、正にただビビっているからに過ぎない。パソコンドリブルによる損失が今後の人生に及ぼす影響が、まだデカすぎる。


 自分で言うのもなんだが私は温厚だと言われることが多い。もちろん人前で物を壊したり生き物を殴ったりしたこともない。だが、私(の中の人)を知っている諸氏は心しておいていただきたい。
 明日もきっと私は「会社のパソコンドリブルしながら帰ったら最高だろうな、ヌフフフ」とか考えながらデスクに向かっている。ビビリの私がなんかのきっかけで死んだとき、デストロイヤーは目を覚まし、あなたの大事なものを破壊しにゆきます。

 

宇宙 椎名町 おばあちゃん

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